歯肉炎と歯周炎を科学的に解説してみた。その③

 

こんにちは、とみざわ駅前歯科、歯科医師の大島です。

みなさんいかがお過ごしでしょうか。

前回は、スリランカ人を対象にした研究を元に、歯周炎が宿主要因によって、発症率が異なることを解説していきました。

今回は、前回の研究の姉妹的な研究である、ノルウェー人を対象にした研究を元に、口腔清掃が歯周炎の進行に与える影響について、解説したいと思います。

 

 

今回は、男性のノルウェー人の、非歯科学生・学者565人(17-30歳)を対象にした研究になります。

方法としては、1969年から1987年の18年の間に被験者を対象として7回の検査が行われました。

評価項目としては、頬側中央、頬側近心歯肉のアタッチメントロス、歯肉炎指数、プラーク指数を評価しました。

今回の研究でなぜノルウェー人を対象にしているかというと、ノルウェーでは、当時から3-16歳にかけて年1回の定期検診をベースとした最高レベルのメンテナンス&歯科治療が実施されています。

ノルウェーは、近代歯科医学の代表するような国なのですね。

これは、日本も見習わないといけないですね。

 

さて、この研究の結果を、スリランカ人を対象にした研究と比較して見ていくと、ノルウェー群では、60-70%の歯面がプラークフリーで、40歳に至るまで口腔清掃は改善していきました。歯肉炎指数は実験期間を通じて一定の値を示しました。

スリランカ群では、15歳の時点でほとんど全ての歯面がプラークに覆われており、この状態が40歳に至るまで維持されました。年齢を重ねるにつれ歯肉炎指数の若干の上昇が認められました。

以下がそれぞれの指数の値になります。

 

プラーク指数 ノルウェー1.14 スリランカ 1.96

歯肉炎指数 ノルウェー0.75 スリランカ1.90

 

ノルウェー群の平均アタッチメントロスは30歳で1mm 隣接面よりも頬側の喪失量が大きかった。

この結果は、アタッチメントロスの原因が、歯周炎による病的な進行によるものより、ブラッシングの擦過による、機械的な進行が原因として考えられます。

磨きすぎも歯を支える骨にダメージを与えちゃうんですね。

 

スリランカ群の平均アタッチメントロスは30歳で3.1mm 頬側よりも隣接面の喪失量が大きかった。

これは言わずもがな、歯周炎による病的なアタッチメントロスですね。

 

まとめると、

・スリランカ人の歯周炎は、ノルウェー人と比較して3倍の速度で進行していた。

・適切なプラークコントロール・治療が行われなければ、3倍の速度でアタッチメントロスが引き起こされる。

 

この研究結果から、口腔清掃により歯周炎の進行を優位に遅らせることができることがわかりました。

子供の頃から、歯ブラシをしないと虫歯や歯槽膿漏で歯が無くなるよ、と言われてきましたが、こういうデータを見ると、より明確に歯ブラシの重要性がわかりますよね。

 

この記事を見て、皆様の毎日の口腔ケアのモチベーションが上がってくれたら幸いです。