歯肉炎と歯周炎を科学的に解説してみた。その①

 

こんにちは、とみざわ駅前歯科の大島です。

みなさんいかがお過ごしでしょうか。

今回のテーマは、虫歯よりも歯を失う原因とされる、歯周病になります。

前にも歯周病をテーマに、全身疾患との関連について解説しましたが、今回は歯科医院で行う歯周治療とメンテナンスの重要性を、科学的根拠をベースに解説していきたいと思います。

17世紀に人類は、ニュートンが万有引力を発見したことから、自然現象を観察・分析し、法則を見出す手法が生まれました。虫歯も歯周病も、口の中の「むしばの妖精さん」が悪さをしてできる訳ではなく、いろんな原因が重なることによって引き起こされます。今回の記事が、皆さんのセルフケアの一助になれば幸いです。

 

まず、歯肉炎と歯周病と呼ばれる歯周炎の違いですが、簡単に説明すると、炎症によって歯を支える骨が溶けているか溶けていないかの違いになります。

歯肉炎の原因も歯周病の原因も主病因としては、歯の表面に付着した細菌性プラークになります。

これは、一般的に歯垢と呼ばれるものですね。

歯肉炎は単純にプラークが原因と言える根拠が存在するのですが、歯周炎に関しては、原因がプラークだけでは無く、前回解説した全身疾患との関連など、様々な要因が重なることによって、進行度が大きく変わるものになります。

まず細菌性プラークが歯肉炎の原因となる根拠を、1965年に発表された「Experimental Gingivitis in Man」という論文を参照し、解説していきます。

こちらは、様々な研究論文で、最も引用されているといわれている、有名な実験になります。

 

 

12名の健常者、平均年齢23歳の歯周病科の学生を対象に行われた実験になります。

開始とともに全ての口腔清掃を停止し、歯肉炎を発症した段階で口腔清掃を再開しました。

評価項目としては歯肉炎指数、プラーク指数、歯肉辺縁の細菌検査になります。

 

結果、全ての被験者が口腔停止後に10-21日に歯肉炎を発症しました。

プラーク指数 0.43 → 1.67

歯肉炎指数 0.27 → 1.05

プラーク指数は、0を歯面に全く歯垢が付いていない状態として、1を細い器具で歯茎の溝を触ると歯垢が取れてくる状態、2を目で見てわかるくらい歯垢が付いている状態を基準にして判定しています。

歯肉炎指数は、0を全く歯茎が腫れていない状態として、1を歯茎が少し腫れているけど細い器具で触ったときに出血しない状態、2を歯茎が腫れて赤くなっていて、器具で触ったときに出血がある状態として判定しています。

口腔清掃停止後6-10日で、スピロヘータやビブリオなどの細菌の増加が認められ、口腔清掃再開後、1週間ほどで歯肉炎は消失しました。

 

結論として、

口腔清掃を停止することでプラークが堆積、被験者は歯肉炎を発症する。

口腔清掃によってプラークを除去することで、歯肉炎が治癒する。

 

この論文からわかることは、全ての人類に等しく、歯肉炎は細菌性プラークによって引き起こされるということになります。

これを踏まえた上で、次回は歯周炎の病因に、プラーク以外の要因が関わっている根拠を解説していきたいと思います。

次回へ続きます。