むし歯と酸蝕症の違いについて

 

 

こんにちは、とみざわ駅前歯科の大島です。

みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 

今回は、酸蝕症について説明したいと思います。

酸蝕症もむし歯と同じで、歯が溶けるものになりますが、そのメカニズムが異なりますので、解説していきたいと思います。

 

歯は、カルシウムやリンなどのミネラル成分でできていて、酸に触れると化学反応が起こり分解され溶けてしまいます。むし歯は、むし菌が出す酸によって歯が溶ける病気で、歯の溝や歯と歯の間など、汚れのたまりやすい場所から歯が溶け始めます。

ですので、むし歯のできる範囲は限られています。

それに対して、酸性の食べ物や飲み物がお口の中に入ってきて、繰り返し歯と接触することで溶け始める現象を「歯の酸蝕歯」と呼んでいます。

飲食物はお口の中全体に行き渡りますから、広範囲の歯に被害が拡大します。

 

歯が溶ける原因は、むし歯菌の出す酸だけではありません。

身近な市販の酸性飲食物を摂った直後の歯の表面は軟らかくなっています(軟化)。

また、持続性の嘔吐がある場合でも、胃酸の影響で歯が溶けます。

 

ただ、酸性飲食物を飲んだり食べたりしても、すぐに歯が溶けることはありません。

歯が溶けずに済んでいるのは、唾液が歯を補修し続けているからです。

唾液の洗浄作用により酸が洗い流され、また緩衝作用により口腔内が中和され、さらには唾液に含まれるミネラル成分によりエナメル質が補修されて、「溶ける+補修する」というバランスが保たれることで歯の健康は維持されています。

また、逆流性食道疾患など内因性酸蝕歯では、この唾液の作用が、歯だけでなく胃食道にまでおよぶことで、外部から届きづらい部位におけるクリアランス向上に重要な役割を担っています。

 

酸蝕歯になりやすい飲食物として、コーラやオレンジジュースなどのソフトドリンク、黒酢やリンゴ酢などのお酢系飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク、柑橘類などの果実、酢の物などが挙げられます。

これらの飲食物を、毎日のようにちびちび飲んだり食べたりしていると、酸が歯に触れる時間が長くなって酸蝕歯になる可能性が高まります。

 

市販飲料の酸性度(pH値)を測定した結果、約73%の飲料が、歯のエナメル質が溶ける数値(エナメル質臨界pH値:pH5.5)を下回る値を示しました。

また、食べ物についても同様に測定した結果、身近に存在する多くの食品が酸性でした。

なぜ人気の清涼飲料水の多くはpH値が低いのでしょうか。

食品衛生法の基準によれば、清涼飲料の殺菌条件は飲料のpHによって区分され、pHが低いほど加熱条件がゆるくなります。

これは、酸性の水溶液そのものに殺菌力があるからです。

このため、高温で加熱すると味が変わってしまう炭酸飲料などはpHが低く酸性度が強くなる傾向があります。

 

酸性度の強い飲食物を、高頻度に(ほぼ毎日)摂取する習慣があり、しかも時間をかけちびちび食べたり飲んだりする癖(デスクワーク中の栄養ドリンク、運転中の炭酸飲料、運動中のスポーツドリンクなど)のある人ほど、酸が歯に触れる時間が長く、唾液による洗浄効果も期待できないため、歯が溶けやすくなります。

他にも、前歯で柑橘類などの果実をかじったり、酢の物をすするようにして食べる方は注意が必要です。