虫歯菌を攻略せよ!その2

 

こんにちは、とみざわ駅前歯科、歯科医師の大島です。

前回は虫歯菌と言われているミュータンスレンサ球菌群の特徴について説明してまいりました。
今回は、そのミュータンスレンサ球菌群の特徴を踏まえた上での、虫歯予防の説明をしていきたいと思います。

 

虫歯の発症において重要な因子の一つは食物中のスクロースの存在です。
スクロースというのは、砂糖の主成分になっている糖の一種で、スクロースが虫歯の誘因になっていることは多くの疫学調査や動物を用いたう蝕実験で確認されています。
スクロースの摂取量が激減した第二次世界大戦中は虫歯の発症率が激減し、戦後に再び著しく上昇したというデータもあり、スクロースの摂取量と虫歯の発症に相関があることは明らかになっています。
また、アメリカの調査では、年間に消費される一人当たりのスクロース摂取量が15~20Kg以上になると虫歯の発症が激増するというデータもあります。
通常、口の中ではミュータンスレンサ球菌群は数の多い菌群ではなく、スクロースの過剰摂取などをきっかけに増加した結果、虫歯を引き起こします。
スクロースを摂取していない人の口の中に小さな装置を入れ、その上に形成された歯垢中の細菌の割合を経時的に観察した実験では、24時間経過後にもミュータンスレンサ球菌は検出されませんでした
つまり、このことから、ミュータンスレンサ球菌群は、エサとなるスクロースが存在しなければ、増殖もしなければ、糖を分解して酸も出すことができないということです。

これを踏まえて、スクロースに強いう蝕誘発性があることから、これに代わるさまざまな低う蝕誘発性甘味料が開発されています。
代表的なものとして、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコールです。
キシリトールガムなんかはよく聞いたことがあると思います。
そのほかにも小糖類(カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、パラチノース)、配糖体類(ステビオサイド、アスパルテーム)があります。
商品の裏の成分表を見て、砂糖やブトウ糖でなく、上記のものを使ったお菓子などを買うと良いですね。

次に、人が備えている虫歯発症に関わる要因としては、歯の質、歯並び、歯の形態など歯そのものに関わるものと、唾液の存在があります。
口腔乾燥症(ドライマウス)などで唾液の分泌量が低下すると虫歯の発症が増加します。
唾液の作用は前のブログで説明していますので、そちらを参照してください。
唾液の作用の中でも、局所に産生された酸を洗い流す洗浄作用と歯垢のpHを中性に戻す緩衝作用がう蝕抵抗性として働きます。
砂糖水などでうがいをすると、唾液や歯垢のpHは急激に下がり、徐々に上昇しますが、この洗浄作用と緩衝作用が強い唾液を持った被験者とそうでない被験者で、pHの上昇速度に優位に違いがあったというデータもあります。

次回へ続きます。