歯の痛みと間違えがちな三叉神経痛 その②

 

こんにちは、とみざわ駅前歯科の大島です。

みなさまいかがお過ごしでしょうか。

前回の続きになります。

 

三叉神経痛は、病初期段階では典型的な症状を示さないことがあるので、診断に苦慮するケースが多いです。

三叉神経痛は進行性の疾患であるので、進行するにつれ、典型的な症状がそろい、最終的にはくっきりとした典型所見により、確定診断に至ります。

たとえば、病初期には以下の症状があります。

 

・強い痛みではないが、瞬間的な痛みが1日に何度も生じる

・三叉神経痛様のいたみだがトリガーゾーンがない

・30分ほど持続する鈍痛が1日何回か起こる

 

など、非典型的な症状が起こることもしばしばです。

痛みの原因がはっきりしていない状況で治療を開始してしまうと、歯の神経に問題ないのに神経を抜く治療を行い、痛みが解消されない上に神経を抜いて歯の寿命を縮めることになりかねないので、我々歯科医師は、慎重に痛みの原因を究明する必要があります。

さて、歯の痛みと勘違いを起こす三叉神経ですが、その原因は加齢による脳動脈の硬化により血管が三叉神経の神経根を圧迫するために生じます。

通常50歳以上で発症するのは、このためになります。

大抵の三叉神経痛は前述の要因で引き起こされますが、10%の割合で脳腫瘍、多発性硬化症などの他疾患が原因で生じることもあります。

若年性の三叉神経痛の場合は後者を疑うので、我々歯科医師はすぐ脳神経外科と対診を取り、脳の精査をしてもらいます。

 

三叉神経痛の治療ですが、薬物療法外科療法に大別されます。

初期には、ほとんどの症例でカルバマゼピンなどの抗てんかん薬による薬物療法になります。

しかし、副作用の有害事象で服用できなかったり、経年的に薬物が奏功しにくくなった場合には外科療法の適応になります。

 

三叉神経痛の国際的な第一選択薬はカルバマゼピンで、痛みの原因が三叉神経痛であれば、服用から48時間以内では90%以上で鎮痛が得られます。

カルバマゼピンで疼痛緩和が得られる期間は平均で5~6年で、10年以上効果が持続するのは40~56%という報告があります。

1日最大用量まで服用しても痛みがコントロールできなくなった場合は、プレガバリンやバクロフェンなどを追加することで効果増強が期待できますが、基本的には薬物療法の限界と考えて外科療法に切り替えます。

 

外科療法では、実際に頭を開いて、神経根を圧迫している血管にフッ素樹脂製のテフロンフェルトをかけて引き離し、固定する方法があります。原因除去療法なので、成功すればほとんど後遺症がないまま三叉神経痛が完治し、再発の可能性も低いです。

しかしながら、極めて術者の技量が求められる難しい治療ですので、執刀する外科医によって成功率が左右する療法となります。

もっとも多い合併症として、顔面神経麻痺や聴覚低下・喪失などがあります。

また、0.1~1%の死亡例も報告されています。

 

外科療法まで移行した場合、歯の治療以上の侵襲治療になりますので、三叉神経痛を予防する上でも、生活習慣には気を付けないとですね。