こんにちは、とみざわ駅前歯科、歯科医師の大島です。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今回は前回の続きになります。
前癌病変と前癌状態
前癌病変とは、将来底から癌が高頻度に発生する可能性がある病変のことをいいます。
前癌病変は発癌過程の初期あるいは中間段階にある可能性を疑われながら、現時点では悪性であることが証明できないような病変であります。
なんとも中途半端な状態ですね。
癌は遺伝子の疾患であり、癌の発症には癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活性化など、複数の遺伝子異常が蓄積された結果生じることが明らかになっています。
腫瘍抑制遺伝子は細胞の増殖抑制や分化に関連し、その遺伝子に変異あるいは欠失が生じて細胞の増殖・分化抑制が不可能になると、正常細胞から腫瘍細胞への変換が起こりやすい環境になります。
一方、癌遺伝子は、一般的には正常細胞の増殖・分化に関与している遺伝子群(癌源遺伝子)で、変異などの遺伝子変化で活性化されて細胞の腫瘍化に働きます。
さらに、腫瘍化した細胞において浸潤・転移に関与した遺伝子群が活性化され、癌細胞の生物学特性を発現するようになります。
前癌病変はすでに発癌過程にあるものとみなされ、その遺伝子異常(変異、欠損、転座、増幅など)の検索を行い、癌組織と比較することにより前癌病変が癌化する可能性の予知が検討されています。
WHOによれば、口腔の前癌病変の臨床的な定義として「それに相対する外見上正常な組織に比べて癌が発生しやすい状態に形態学的に変化した組織」とされ、白板症、紅板症、口蓋角化症が分類されています。
白板症
口腔白板症は、口腔粘膜に角化亢進により白斑を生じる臨床名であり、WHOによれば、「摩擦によって除去できない白色の角化性病変で、臨床的あるいは病理組織学的に他の診断可能な疾患にできないもの」と定義されています。
原因は不明で、局所的誘因としては、タバコ、アルコール、不良補綴物、刺激性食品などの物理的・化学的刺激、全身的には貧血、ビタミンA、Bの欠乏、低タンパク血症などが挙げられます。
好発年齢は50~60歳代の高齢者で、男性が女性の2倍と多いです。
白板症の癌化率は4~18%と報告されています。
癌化率が高いのは、部位としては舌で、発症様式は多発性のものになります。
治療としては、まず誘因があればそれを除去します。
喫煙者には禁煙を促し、歯の鋭縁の削合や不良補綴物の修復を行います。
根治療法としては、外科的に切除します。
特に、将来癌化の可能性が高い病態の場合は、確実に切除しておくべきです。
次回へ続きます。