こんには、とみざわ駅前歯科、歯科医師の大島です。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今回も前回の続きになります。
紅板症
紅色肥厚症ともよばれ、鮮紅色ビロード状の非炎症性の限局性の紅斑で、WHOの診断基準によれば、白板症と同様に「臨床的にも病理組織的にも他の疾患に分類されない紅斑」とされています。
周囲に白板症を伴うこともあります。
好発部位としては、舌、軟口蓋、口底、頬粘膜に発生します。
好発年齢としては、60~70歳の高齢者に多く、性差は特にありません。
診断方法としては、病変を採取し、生検によって組織学的に確定診断を行います。
組織所見では、上皮層の萎縮が認められ、上皮性異形成は高度で、早期浸潤癌や上皮内癌を伴うことが多いです。
癌化率は50%白板症と比較すると高く、口腔粘膜病変の中でも最も高いものとなっています。
治療としては、癌化率が高いので、周辺の健常組織を含めた確実な外科的な切除を行います。
広範囲に及ぶ場合には放射線治療や癌化学療法の併用療法など、浸潤癌と同等の治療を行うこともあります。
前癌状態
前癌状態とは、前癌病変とほとんど同義語で用いられることもありますが、厳密には前癌病変は組織学的に認識できる病変に対して用いて、前癌状態は全身的な疾患に伴う局所変化、さらには疫学上でのハイリスク群に対しても用いるという考えが多いです。
WHOでは「前癌病変に類似した良性の病変」に分類され、「発癌性のリスクを有意に増大させるのに一般的状態」と定義されています。
この「一般的状態」には、全身的あるいは局所的に免疫抑制をきたす状態、貧血あるいは虚血を伴う粘膜の萎縮を生じる状態、それらに継続して粘膜のびらんや潰瘍、修復を繰り返す状態などが考えられます。
WHOでは、このような前癌状態として次の7つの疾患を挙げています。
1:鉄欠乏性嚥下障害
2:扁平苔癬
3:口腔粘膜下線維症
4:梅毒
5:円板状エリテマトーデス
6:色素性乾皮症
7:表皮水疱症
前癌状態の治療法としては、前癌病変と比較して、組織学的に認識できる病変に対して外科的切除療法などのアプローチが無いため、それぞれの全身疾患に対しての原因療法や対症療法を行います。
口腔扁平苔癬に対しては対症療法として副腎皮質ステロイド軟膏、噴霧剤あるいは貼付剤などが用いられます。
梅毒に対しては、ペニシリン系抗菌薬を使用します。ペニシリンは梅毒トレポネーマに感受性が高く、耐性菌もないため、第一選択薬になります。