こどもの歯が抜けて生え変わるときに何が起こっているの?その②

 

 

 

こんにちは、とみざわ駅前歯科の大島です。

皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今回は、前回の続きになります。

 

乳歯の歯根吸収には、歯とその周りの歯周組織を構成している硬組織の吸収と軟組織の浸食があり、それぞれ別種の細胞群によって、行われます。

硬組織の吸収は主に破歯細胞と呼ばれる細胞によって行われ、ハウシップ窩と呼ばれる吸収の起点を作り、波状に進行します。

乳歯の歯根吸収に直接関与する細胞、すなわち歯根のセメント質や象牙質を吸収する細胞を破歯細胞と呼びます。

破歯細胞は構造的・機能的に骨を吸収する破骨細胞と何ら変わらず、現在のところ両者ともに同一の細胞と判断されています。

 

軟組織の浸食はマクロファージと呼ばれる細胞(硬組織の組織残渣や変性した細胞成分の貪食・消化)や繊維芽細胞(老化したコラーゲン線維の貪食・消化)によって行われます。

歯根吸収が一時停止すると、吸収された歯根表面はセメント芽細胞と呼ばれる細胞によってセメント質が形成されます。

つまり乳歯の歯根吸収は、

  • 活発な吸収期
  • 歯根吸収の休止期
  • セメント質形成による修復期

の3段階を繰り返しつつ進行し、最終的には乳歯根がほとんど消失して乳歯が動揺・脱落し、その位置に永久歯が萌出します。

歯根吸収が進行してほぼ乳歯根がほぼ消失すると、口腔粘膜上皮が吸収した歯根面の下部に増殖・浸食して、粘膜上皮で吸収面を覆うようになります。

このため、乳歯の頭の部分は口腔粘膜の血管や結合組織と徐々に分離されるので、特に顕著な痛みや出血を生じることなく、乳歯は動揺・脱落することが可能になります。

 

 

乳歯の歯根吸収をもたらす要因は、未だに充分に解明されていません。

考えられている要因としては、

  • 後続永久歯の萌出に伴う歯根方面への圧力の増大
  • 顎・顔面の成長と筋肉の発育に伴う咀嚼力の増大による乳歯への負担の増大

が挙げられます。

後続永久歯の萌出圧によって、永久歯の頭の部分と乳歯根の間の組織中に破骨細胞あるいは破歯細胞が誘導されて、乳歯歯根と周囲の歯槽骨の吸収が起こると考えます。

しかし実験的には、永久歯の歯胚を取り除いても、乳歯根が吸収されるのが確認されたため、萌出圧のみが決定的になる要因になるとは言えないようです。

咀嚼力の増大による乳歯への負荷の増大も、荷重負荷による歯根膜側からの歯根吸収を促進すると考えられているので、これら2つの要因が複合したものが、乳歯の歯根吸収をもたらすと考えられています。

 

次回へ続きます。